力士が土俵を去る際に行われる最も厳厳な儀式が「断髪式(だんぱつしき)」です。関取として実績を残した力士は、両国国技館の本場所土俵上で引退相撲を開催し、大勢のファンや関係者が見守る中で大銀杏にハサミを入れます。
断髪式の意味と経緯には、深い歴史と文化が込められています。髷を切り落とすことは、武士が刀を置くのと同様に「相撲社会からの決別」と「一般社会への復帰」を意味します。
儀式では、後援者、家族、同期の力士、親方衆など数百人が順番に土俵へ上がり、少しずつ髷にハサミを入れていきます。そして最後に、育ての親である師匠(部屋の親方)が髷の根元に大きなハサミを入れ、完全に髷が切り落とされます。髷を落とした元力士は土俵下へ降り、控室で整髪してスーツ姿で再びファンの前に現れます。その瞬間、土俵を沸かせた戦士から新たな人生を歩む一人の人間へと生まれ変わるのです。