『宇宙兄弟』におけるチームの話が圧倒的な支持を集める最大の理由は、「最初から息の合った理想のチームなど存在しない」という冷徹なリアリティを出発点にしている点です。その象徴とも言えるエピソードが、JAXA宇宙飛行士選抜における閉鎖環境試験と、月面着陸を目指すNASAのクルー「ジョーカーズ」の物語です。
閉鎖ボックスという極限状態に置かれたA班・B班・C班の受験者たちは、疑心暗鬼やプレッシャーに晒されながらも、互いの人間性をさらけ出していきます。主人公の南波六太(ムッタ)が所属するA班では、最終的に「密室で誰か2人を落とす」という過酷な選抜課題に対し、全員が納得する答えを模索しました。単なる能力の優劣で仲間を切り捨てるのではなく、互いの覚悟を認め合った末の選択プロセスは、多くの読者に深い感銘を与えています。
一方、NASAで六太が配属された第51次月面着陸ミッションクルー「ジョーカーズ」は、当初「問題を抱えた落ちこぼれの集まり」と揶揄されていました。性格もバックグラウンドもバラバラな曲者たちが、訓練と対話を重ねる中で「自分たちにしかできない最高のミッション」へと結束していく姿は、組織づくりの真髄を鮮やかに描き出しています。不揃いなピースだからこそ、噛み合ったときに強固な一枚岩になれるというメッセージが、読者の胸を強く打つのです。