梅宮辰夫さんの料理を語る上で欠かせないのが、職人も顔負けの徹底した道具と環境へのこだわりです。東京・松濤の邸宅をはじめ、各地の別荘に設えられた自宅厨房は、一般的な家庭用システムキッチンとは一線を画すものでした。業務用の強力なガスコンロ、特注のステンレス製作業台、大型冷蔵庫が並び、まるで高級割烹や老舗中華料理店の厨房そのものといった佇まいを誇っていました。
道具への愛着も並外れており、特に京都の老舗刃物店「有次」などで誂えた愛用包丁は、出刃、柳刃、牛刀、中華包丁に至るまで数十本を揃え、日々の手入れを一切怠りませんでした。自ら築地市場(現・豊洲市場)へ通い詰め、仲卸のプロたちと対等に魚の目利きを議論しながら仕入れた大魚を、見事な手さばきで一気に捌く料理の腕前は、テレビの企画の枠を完全に超えた職人の領域に達していました。