元花柱である胡蝶カナエが辿った末路は、壮絶極まるものだった。人間を喰らう鬼に対してすら憐れみの情を捨てなかった彼女だが、その慈愛が単なる甘さだったわけではない。圧倒的な強者を前にしても最後まで刀を振り抜き、柱としての責務を果たし抜いたのだ。その死闘の相手こそ、十二鬼月の上弦の弐・童磨である。
夜明けまでの熾烈な戦闘の末、致命傷を負ったカナエは、駆けつけた妹の胡蝶しのぶの腕の中で息を引き取る。その間際に残した言葉――自身を討ち取った鬼の容姿や能力の特徴についての口伝は、単なる復讐の指示ではなかった。しのぶの身を案じ、これ以上危険な戦いに深く踏み込ませたくないという姉ならではの狂おしいほどの愛と、それでも残酷な現実に直面せざるを得ない悲劇性が同居していた。二人の間に結ばれた絆は、のちにしのぶが仕掛ける壮絶な覚悟の根底を支えることとなる。