2012年8月、望月教授は自らのウェブサイト上に、総ページ数500ページを超える4編のプレプリントを突如公開しました。そこで提唱されたのが宇宙際タイヒミュラー理論(Inter-universal Teichmüller Theory, 略称IUT理論)です。
従来の現代数学では、すべての議論はひとつの「固定された舞台(環や体の構造を持つ数学的宇宙)」の上で行われます。しかし、望月理論はこの大前提を破壊しました。「複数の異なる数学的宇宙」を同時に並列させ、宇宙の間を行き来させることで、強固に絡まり合っていた「足し算」と「掛け算」を一度切り離し、別々の宇宙で歪みを計測してから復元するという手法を導入したのです。
このアプローチはあまりに独創的であり、使われている専門用語や記号体系の大部分が望月教授自身によって新たに生み出されたものでした。そのため、世界中の第一線で活躍する数論学者であっても、最初の数ページを読み解くことすら困難を極めるという異例の事態に陥りました。