朝ドラ放映よりも遥か以前に、彼女の凄まじい生き様を世に知らしめたのが、社会派小説の巨匠・山崎豊子による直木賞受賞作『花のれん』である。この作品では、主人公・河島多加のモデルとして吉本せいの人物像が徹底的な取材に基づいて描かれている。
山崎豊子が写し取ったせいは、人情味に溢れる一方で、収益や効率にはどこまでもシビアな凄腕経営者であった。不景気の波が押し寄せた際には競合する寄席を次々と買収して倒産から救い、自らの支配下に組み入れることで市場の独占を達成。芸人のギャラ管理や顧客動向の分析においても、現代のマーケティング手法に通じる徹底した数値管理を行っていたとされる。