『メイドインアビス』が初見の読者・視聴者に強烈な衝撃を与える最大の要因は、「愛くるしいビジュアル」と「容赦のない残酷描写」の圧倒的なギャップにあります。主人公のリコやレグをはじめとする少年少女たちは、まるで児童文学や名作劇場を彷彿とさせる頭身と柔らかなタッチで描かれています。しかし、彼らが挑む大穴「アビス」の現実は、倫理や人道が一切通用しない冷酷な弱肉強食の世界です。
本作における残酷さは、単に血が流れるスプラッター表現にとどまりません。不可逆な肉体変異、極限状態での生々しい排泄や嘔吐、そして純粋な善意や親愛の情が無慈悲に蹂躙される「精神的・倫理的な鬱展開」が徹底して積み重ねられます。この徹底したリアリズムと容赦のなさが、読者の心に深く刺さるトラウマを生み出す原動力となっています。
さらに恐怖を増幅させているのが、アビスという巨大な縦穴固有の環境ルールである「アビスの呪い(上昇負荷)」の存在です。下層へ潜れば潜るほど、地上へ戻ろうと上に登った際に肉体と精神へ苛烈なペナルティが襲いかかります。
逃げ場のない深淵へ進むほど、人間としての尊厳や形すら奪われていくという物理的な設定そのものが、本作のグロテスクな恐怖を支える骨格となっているのです。