偉大な父・阪東妻三郎の背中を追うようにして表現の世界へ飛び込んだ兄弟たち。しかし、彼らの間には決して互いを誇張し合わない、独特の距離感と深い信頼が存在していた。長兄の田村高廣は重厚な演技派として映画や演劇で確固たる地位を築き、若き日の弟たちにとって精神的な支柱であり続けた。三男の田村正和は独自の美学と静寂をまとった唯一無二のスタイルを確立し、四男の田村亮は親しみやすさと繊細な感情表現を兼ね備えた名バイプレイヤーとして活躍した。
父・阪妻が遺した「役に命を吹き込む」という教えは、兄弟それぞれの中で異なる花を咲かせた。生前、兄弟が揃ってメディアの前で家族の絆を誇示することは滅多になかった。プライベートを徹底して守り抜くストイックな姿勢こそが、彼らが父から受け継いだ最大の真実であり、プロフェッショナルとしての矜持だったのだ。