名付けや個人のスローガンとして絶大な人気を誇る漢字がある。しかし、私たちが日常的に使っているその一字の裏には、教科書では教わらない劇的で意外な歴史的背景が隠されているのをご存じだろうか。
例えば、常用漢字の筆頭とも言える「愛」。現代では無償の親愛や恋愛感情を象徴するが、古代の字形を遡ると、後ろを振り返り胸に手を当ててたたずむ人の姿(旡+心+夂)に突き当たる。切なくて足が進まない、愛おしさに思わず立ち止まってしまう胸の締め付けこそが「愛」の原意だったのだ。
また、東日本大震災以降、人々の結びつきを表す代表格となった「絆」。糸偏に「半」と書くこの字は、本来「馬や牛などの足をつなぎとめる縄」を指していた。自由を縛り付ける道具という冷徹な出自から、互いを引き寄せ離さない絶対的な人間関係の象徴へと意味が昇華したプロセスは、まさに言葉が生きた歴史そのものと言える。
さらに人名用漢字として屈指の支持を集める「凛(凜)」は、「冫(にすい=氷)」と「稟(蔵に穀物を納める)」が組み合わさった文字だ。厳しい寒さの中で穀物を蔵にしっかりと蓄え、身を引き締める情景を表す。自分軸を揺るがさない強い意志と、静かな気品を宿すこの漢字が名付けや座右の銘に好まれるのは、変化の激しい現代社会を生き抜くための「心の盾」として人々が直感的にパワーを感じ取っているからに他ならない。