著者であるただのぶこの描画力と心理描写の巧みさは、連載初期から際立っていた。単なるドロドロとした恋愛漫画のジャンルに収まらず、読者の日常に潜む「言葉にできないモヤモヤ」を鮮やかに浮き彫りにしてみせた。
表現の根底にあるのは、人間の愚かさや迷いを排除しない温かな観察眼だ。コミックエッセイという手法を用いながら、誰もが一度は感じる罪悪感や孤独を丁寧にすくい上げ、視覚的なストーリーテリングへと昇華させた。登場人物たちの表情の陰影や行間の間尺は、読者に自身の生活を顧みさせる圧倒的なリアリティを放っている。