ヒロインを支える藤代孝治役を演じた山田孝之の演技も、本作の完成度を極限まで高めている。当時の彼は、影のある青年役をやらせたら右に出る者はいないほどの存在感を放っていた。人生に絶望し、投げやりになっていた少年が、薫の歌声と生き方に触れることで、少しずつ人間らしさを取り戻していく過程が見事だ。
派手なセリフやアクションがあるわけではない。ただ、薫を見つめる眼差し、沈黙の間に漂う葛藤、そして彼女を失う恐怖に震える背中。山田孝之の「静」の演技が、物語に圧倒的なリアリティと深みを与えていたことは疑いようがない。