会見の異様な光景ばかりがクローズアップされたが、その直前に中川氏が成し遂げた成果こそ、国際金融史における金字塔であった。彼が主導した国際金融支援政策の核となったのは、日本の外貨準備高から国際通貨基金(IMF)へ最大1000億ドル(当時のレートで約9兆円)を拠出するという前代未聞の協定締結である。
この膨大な流動性供給によって、資金ショートの恐怖に怯えていた新興国や中東欧諸国は破滅の縁から救い出された。当時のIMF専務理事であったドミニク・ストロスカーン氏が後年、「人類の歴史上、最も偉大な貢献であった」と惜しみない賛辞を贈った事実は、日本のメディアでは大きく報じられることがなかった。自国の利益を守りつつ、世界経済の連鎖倒産を防いだこの英断は、財務省と日銀のタッグのもとで中川氏が執念で見出した起死回生の一手だったのである。