ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』での記憶に残る好演は、彼女にとって大きな転機となった。フレンチ・ロックの難曲を見事に歌いこなし、重厚なドラマを歌声一つで引っ張る姿は、すでに宝塚というフレームを超え出た舞台人としての器を感じさせていた。
男役という記号を背負いながらも、役の根底にある人間性を掘り下げて歌うスタイル。それは退団後の現在、あらゆるジャンルのミュージカルへ柔軟に適応する強力な武器となっている。ソプラノから豊かなアルト、そして力強い地声のハイトーンまで自在に行き来するボーカルスキルは、まさに日本の舞台演劇界が今最も必要としている稀有な才能と言えるだろう。