『てっぱん』の魅力の根幹を支えていたのは、瑞々しいヒロインを取り巻く重厚なキャスト陣のアンサンブルでした。オーディション応募者1424人の中から選ばれた瀧本美織さんは、当時演技経験が浅かったものの、持ち前の真っ直ぐな瞳と類まれな身体能力で「ガンボ(やんちゃ)なあかり」を体現しました。彼女はその後、TBS系『美男ですね』の主演やスタジオジブリ映画『風立ちぬ』のヒロイン・里見菜穂子役の声優、さらには舞台やミュージカルなど幅広いジャンルで実力派女優としての地位を盤石なものにしています。関係者の証言でも「現場での真摯な姿勢と礼儀正しさは当時から際立っていた」と評されており、その人柄が息の長い活躍を支えています。
あかりの育ての父・村上錠を演じた遠藤憲一さんは、当時まだ「強面バイプレイヤー」の印象が強かった時期に、誰よりも娘を愛する温厚で不器用な父親を熱演。この役を契機にお茶の間での好感度が急上昇し、現在の「国民的お父さん・愛されキャラ」へとつながる決定的な転換点となりました。また、育ての母・真佐子を演じた安田成美さんの包容力あふれる演技も、作品の温かなトーンを決定づけていました。
そして物語の屋台骨となったのが、あかりの実の祖母・田中初音を演じた名優・富司純子さんです。「イケズ」と恐れられながらも心に深い孤独と愛情を秘めた下宿屋の家主を、圧倒的な気品と陰影のある演技で表現しました。現在も映画界の重鎮として唯一無二の存在感を放っています。さらに、あかりの長兄・鉄平を演じた森田直幸さん、次兄・欽也を演じた長田成哉さん、下宿人の若手社員・滝沢を演じた尾美としのりさん、コーチ・中岡役の趙珉和さんなど、脇を固めた個性派俳優たちもそれぞれ映像・舞台の世界で確固たるキャリアを築いています。