劇中に登場する「近畿商事」は、まさに瀬島氏が手腕を振るった大手総合商社・伊藤忠商事がモデルだ。繊維商社からの脱却を図り、資源・エネルギーや重化学工業といった国家規模のビジネスへ参入していく過程は、昭和の日本が奇跡の経済成長を遂げる歴史そのものである。
当時の総合商社は、単なる貿易仲介業ではない。国家の命運を左右する情報戦の最前線であり、時として一国の政権をも揺るがす裏交渉の舞台でもあった。防衛庁の戦闘機選定を巡る泥沼の受注合戦や、海外権益をめぐるライバル企業との極秘工作など、作中で描かれたエピソードの多くは、実際の事件や実在の企業活動を周念に取材した山崎豊子のリアリズムによって支えられている。