本作の圧倒的な説得力を支えているのが、主演を務めた蒼井優と江口洋介の熱演だ。鹿児島から上京し、一歩も引かない度胸で洋菓子作りに挑むヒロインを演じた蒼井優。対する江口洋介は、過去の深い傷から心を閉ざした伝説のシェフを見事に演じ切った。二人が火花を散らす緊迫した芝居の応酬は、今なおファンの語り草だ。
今回の取材で改めて浮き彫りになった撮影裏話も興味深い。撮影に入る前、キャスト陣は実力派パティシエのもとで過酷な特訓を重ねたという。吹き替え(スタント)を一切使わず、クリームを塗るナッペや繊細なデコレーションを自らこなすため、手が腫れ上がるほど練習に没頭した。スクリーンに漂うあの本物の緊張感は、妥協を許さない役作りの結実だったのだ。