手足口病は予後良好な疾患とされますが、極めて稀に中枢神経系合併症(無菌性髄膜炎、脳炎、急性弛緩性麻痺など)や心筋炎、神経原性肺水腫などの重篤な病態を引き起こします。特にエンテロウイルス71(EV71)は中枢神経親和性が高く、アジア諸国を中心に過去の大規模流行で重症例が報告されてきた歴史があります。
以下の症状が1つでも認められる場合は、手足口病の「重症化サイン」として救急外来を直ちに受診する必要があります。
- 高熱が3日以上継続している
- 呼びかけに対する反応が鈍く、視線が合わない、意識が朦朧としている
- 頭痛を激しく訴える、または噴水状に激しく嘔吐する
- 寝入りばなにビクッと大きく手足が跳ねるような不随意運動(ミオクローヌス)を繰り返す
- 呼吸が異常に速く浅い、顔色が青白い、脈が非常に速い
- おしっこが半日以上出ておらず、泣いても涙が出ない(重度脱水)
自宅での実践的な対処法:痛みの緩和と栄養・水分管理
現時点で手足口病の原因ウイルスそのものを叩く抗ウイルス薬は存在しません。治療は対症療法が基本となります。特に発症初期に親を悩ませるのが、口内炎による摂食拒否です。
痛みを最小限に抑えるためには、食事の温度と性状をコントロールすることが鉄則です。柑橘類、トマト、塩分の強いスープ、炭酸飲料といった酸味や塩分が強いものは激痛を誘発します。常温より少し冷ましたゼリー、プリン、バニラアイスクリーム、冷製ポタージュ、冷まし粥など、噛まずに飲み込める喉越しの滑らかな食品を選定してください。ストローを使うと口内の特定の部位に刺激が直撃することがあるため、スプーンで少しずつ流し込む工夫が有効です。
皮膚の水疱に対しては、強い痒みがない限り特別な外用薬は不要です。自己判断で市販の強いステロイド軟膏を塗布すると、局所の免疫反応が抑制されてウイルス増殖を助長し、皮疹が悪化するリスクがあるため厳禁です。二次的な細菌感染(とびひ化)を防ぐため、患部を清潔に保ち、子どもの爪を短く切っておくことが重要です。