地方都市の公共施設が、なぜ長年にわたり国内外の建築関係者やカルチャー愛好家を惹きつけ続けるのか。その答えは、建築家・新居千秋氏が具現化した「街のような内部空間」にあります。カダーレは2012年度のグッドデザイン賞や、国内建築界で最高峰の栄誉とされる日本建築学会賞作品賞など名だたる賞を獲得しました。その根幹にあるのは、従来の文化会館が抱えていた「用途ごとの閉鎖的な壁」を極限まで打ち破った点にあります。
最大の特徴は、建物を斜めに貫く通路「アクティビティストリート」です。駅前商店街から自然と人が吸い込まれるように設計されたこの空間は、館内を歩くだけで視線の先に図書館の書架が見え、市民活動支援センターでの打ち合わせ風景が広がり、ギャラリーの展示作品が目に飛び込んできます。単なる移動スペースではなく、人々の活動そのものを空間の装飾へと昇華させているのです。
さらに圧巻なのが、可動壁と昇降客席を駆使した大ホールの空間ギミックです。可動式の反響板や客席ユニットを完全に収納することで、最大1,110席の本格的なプロセニアム劇場から、段差のない巨大な平土間アリーナ、さらには壁を開放してアクティビティストリートと一体化するオープン広場へと姿を変えます。地域の伝統芸能から大規模コンサート、コンベンションまで自在に受け止める可変性は、現代建築における空間適応の到達点といえます。