1950年代のデビュー以来、十朱幸代は常に第一線で演技の幅を広げ続けてきた。少女時代の愛らしさから、大人の女性が抱える業や情念、そして酸いも甘いも噛み分けた堂々たる存在感まで、彼女の演じた役柄は多岐にわたる。ラジオドラマやテレビドラマでの親しみやすいキャラクターで国民的人気を博す一方、映画では鬼才監督たちの演出に応え、数々の映画賞を総なめにした。
彼女の魅力は単なる美貌にとどまらない。役に没入する狂気とも言える情熱と、カメラの前で見せる一瞬の隙、その落差が観客の心を掴んで離さなかったのだ。時代が変わっても古びない演技のリアリティは、彼女が作品一つひとつに注ぎ込んだ人間観察の深さの証と言える。