野外で遭遇する吸血昆虫のなかでも、アブとブヨは外見的特徴と生息環境が大きく異なります。正確な見分け方とそれぞれの行動パターンを把握しておくことは、被害を未然に防ぐための第一歩です。
アブ(虻)は、体長がおおむね15mm〜30mm程度あり、見た目は大型のハエやハチに似ています。複眼が非常に大きく、金属的な光沢を持つ種も多く存在します。牛や馬などの家畜、野生動物、そして人間の皮膚を鋭い大あごで「切り裂いて」浸み出た血液を吸うため、噛まれた瞬間にチクッとした鋭い激痛が走り、即座に出血します。発生時期は6月〜9月の夏季が中心で、特に気温が高くカラッとした日中の晴天時に活動が活発化します。水辺や湿地、草むらに加え、車の排気ガスやエンジンの熱、二酸化炭素に強く誘引される習性があります。
一方、ブヨ(地域によってブユ、蚋=カチラスとも呼ばれる)は、体長わずか2mm〜5mmほどの丸みを帯びた黒っぽいコバエのような姿をしています。幼虫期を極めて水質が清浄で溶存酸素量の多い渓流でしか過ごせないため、名水と呼ばれる清流や上流のキャンプ場、ゴルフ場周辺に密集して生息します。ブヨもアブと同様に皮膚を「噛みちぎって」吸血しますが、唾液中に麻酔成分と抗凝固成分(血管拡張物質)を含んでいるため、噛まれた瞬間は痛みをほとんど感じません。発生時期は3月〜10月と長期にわたり、直射日光を嫌うため「春・秋の曇天時」や「夏場の朝マズメ・夕マズメ(早朝と夕方)」に集中して人間を襲います。