都市空間に順応した個体群は、専門家の間で「アーバン・ベア」と定義される。この現象は単なるドングリやブナの実の凶作だけで説明がつくものではない。北海道大学の坪田敏男教授をはじめとする研究者らは、人間側の社会構造変化とクマ側の世代交代がもたらした複合的な帰結だと指摘する。
耕作放棄地の拡大と過疎化によって里山の藪が深くなり、山と街の境界線が消失した。その結果、人里近くで生まれ育った若い個体は、車の走行音や人工的な光に対する恐怖心を遺伝子レベルで持たずに成長する。果樹園の落果、家庭菜園の残渣、無防備な生ゴミ。市街地は彼らにとって、エネルギーを最小限で大量摂取できる「効率的な餌場」として再定義されてしまったのだ。