日本の言語文化を支える岩波書店の『広辞苑』を開くと、「役不足」の項には誇り高き役者たちの矜持が刻まれている。辞書編纂の現場では、時代とともに変化する言葉の意味と、伝統的な正用との間で常に熾烈な議論が交わされているが、「役不足」の本来の意味は揺らぐことがない。
言葉の辞典編纂といえば、三浦しをん氏の小説『舟を編む』でも描かれたように、膨大な言葉の海から正しい意味を掬い上げる果てしない作業だ。辞書編纂者たちが守り続けてきた日本語の正確な定義に触れると、私たちが日常で何気なく使う一言がいかに重い意味を担っているかを痛感させられる。出版業界においても、「役不足」の誤用チェックは校正・校閲における定番の確認項目となっている。