妹島和世の建築が世界中の批評家や市民を惹きつける最大の要因は、「圧倒的な透明性」「極限まで細く設計された構造体」「内外の境界の曖昧化」にあります。従来の公共建築に見られた「権威性」や「重厚なモニュメント性」を徹底的に排除し、周囲の風景や人々の営みを受け入れるフラットな場をつくり出す点が特徴です。
2010年、SANAAとしてプリツカー賞を受賞した際、審査員団は選考理由として次のような趣旨の声明を発表しました。
「彼らの建築は、一見すると極めてシンプルでありながら、空間の連続性と流動性を極限まで探求している。固さと柔らかさ、透明さと不透明さの繊細なバランスを取りながら、人々が自由に活動できる開かれた環境を提示した」
ザハ・ハディドに続く女性として史上2人目、日本人女性としては初の快挙となったこの受賞は、単なる形態の美しさだけでなく、「人々がどのように集い、過ごすか」という空間の民主化を成し遂げた思想が高く評価された結果でした。