キューバ人選手の球歴を語る上で避けて通れないのが、「亡命」と「国家による統制」の二面性です。冷戦構造の名残により、アメリカ政府とキューバ政府の間には経済制裁と渡航制限が存在します。そのため、キューバ人選手が世界最高峰のMLBで巨額の契約を結ぶには、第三国へ密出国して居住権を獲得する「亡命」が唯一の手段となってきました。
日本でも大きな波紋を呼んだのが、2015年に起きたユリエスキ・グリエル契約解除事件です。2014年に横浜DeNAベイスターズで打率.305・11本塁打と鮮烈なデビューを飾ったグリエルでしたが、翌2015年の春季キャンプ合流時に「飛行機恐怖症」や「怪我の治療」を理由にキューバからの出国を拒否。球団関係者が現地へ飛んで説得を試みたものの来日は実現せず、契約解除に至りました。
当時の報道や関係者の証言によると、その背景にはキューバ国内での政治的圧力や、MLB挑戦への強い願望がありました。事実、グリエルは2016年に弟のルルデス・グリエルJr.とともにカリブ海選手権開催地であるドミニカ共和国から亡命。ヒューストン・アストロズと大型契約を結び、2026年には37歳にしてア・リーグ首位打者に輝くなど、MLBでもトップクラスの打者として大成功を収めました。
さらに近年では、中日に所属していたジャリエル・ロドリゲスがWBC終了後にアメリカへ渡り、MLBトロント・ブルージェイズと契約した事例のように、NPBの複数年契約下であっても亡命を選択するケースが発生しています。キューバの深刻な経済危機や、母国の家族を支えるための切実な選択という背景がある一方、球団側にとっては予期せぬ戦力離脱という巨大なリスクを常に背負う構造となっています。
キューバ出身の現役・名メジャーリーガー一覧
亡命を経てMLBへ渡り、スーパースターとなったキューバ人選手たちも数多く存在します。
- ランディ・アロザレーナ:ポストシーズンで驚異的な本塁打記録を樹立した強打の外野手。
- ヨルダン・アルバレス:アストロズの絶対的主砲。異次元の長打力を誇るスラッガー。
- ルイス・ロバートJr.:走攻守すべてにおいてMLB屈指の身体能力を誇る外野手。
- アロルディス・チャップマン:人類最速169km/h(105.8mph)を記録した伝説の左腕守護神。
- アドリス・ガルシア:テキサス・レンジャーズで世界一に貢献した勝負強きクラッチヒッター。