生魚を口にする際、現代の消費者が最も懸念するのがアニサキスなどの寄生虫リスクです。「深海魚や大型のカレイ類には寄生虫が多いのではないか」という不安の声を耳にすることもありますが、現場の流通工程を検証すると安全の実態が見えてきます。
現在、国内の大手回転寿司チェーンや加工流通業者で扱われるカラスガレイやオヒョウのえんがわは、ほぼ100%が冷凍原料として輸入されています。厚生労働省のガイドラインおよび食品衛生法では、アニサキスの危害防止として「マイナス20℃以下で24時間以上の冷凍」が定められていますが、商業輸入される水産物はマイナス30℃〜マイナス40℃の超低温急速冷凍庫で長期間保管・輸送されます。この凍結プロセスによって寄生虫は確実に死滅するため、回転寿司のえんがわから生きたアニサキスが検出されるリスクは限りなくゼロに近いと言えます。
むしろ注意を要するのは、国内沿岸で獲れた天然ヒラメを生のまま流通させるケースです。ヒラメには「クドア・セプテンプンクタータ」と呼ばれる粘液胞子虫が筋肉内に寄生している場合があり、多量に摂取すると食後数時間で一過性の下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。もちろん、現在の中央卸売市場や産地では厳密なモニタリング検査が敷かれており、リスクのある個体は排除されていますが、「安価な輸入カレイのほうが衛生管理上の冷凍履歴が明確で安全である」という皮肉な逆転現象が起きている点は知っておくべき事実です。