日本のおバカブームを語る上で欠かせないのが、2005年から2011年にかけて放送された『クイズ!ヘキサゴンII』です。番組発のユニット「羞恥心」(つるの剛士・野久保直樹・上地雄輔)や「Pabo」(里田まい・スザンヌ・木下優樹菜)はNHK紅白歌合戦に出場する社会現象を巻き起こしました。
当時のクイズ番組が提示した画期的なフォーマットは、「正解を出せない解答者を罰するのではなく、突拍子もない珍回答を魅力的なエンターテインメントに仕立て上げる」という演出手法でした。
歴史上の偉人の名前を問われて予想の斜め上を行く単語を叫んだり、四字熟語を珍妙な造語に変換したりする様は、視聴者に対して「勉強ができなくても人柄が愛らしければ肯定される」という強いカタルシスを与えました。しかしその狂騒は、視聴率競争の過熱とともに、より過激で不自然な珍回答のインフレを引き起こすことになります。
2010年代半ばを過ぎると、SNSの普及とネットリテラシーの向上に伴い、視聴者の視線は急速に冷徹なものへと変化していきました。「本当に知らなかったのか、それとも台本通りに演じているのか」という疑惑が視聴者の間で共有され、テレビ特有の作為性がエンタメとしての求心力を失う契機となったのです。