相撲界において、20代後半から30代を迎える時期は通常、ベテランとして衰えとの戦いが始まる頃だ。しかし、彼はその常識を完全に覆してみせた。35歳にして幕内の土俵へ返り咲き、初場所で破竹の開幕6連勝を飾ったあの衝撃を覚えている人も多いだろう。
なぜ、若手が台頭する現代の大相撲で遅咲きの開花が可能だったのか。秘密はその独特な取り口にある。正面から相手の威力を受け止めつつ、持ち前の柔軟さで圧力を逃がし、最後は自分の間合いへと引きずり込む。パワー勝負一辺倒ではない、長年の経験に裏打ちされた高度な戦略性が実を結んだ瞬間だった。