生活必需品であるはずの電卓に対して恐怖を抱く理由を紐解くと、人間の防衛本能と密接に結びついた「2つの大きなベクトル」が存在することが分かります。
第1のベクトルは、「未知のシステム挙動に対する不気味さ」です。普段は冷徹なまでに正確な計算結果を返す装置が、特定の操作によって突然ブラックボックス化し、理解不能な記号や無限ループのような反応を示す瞬間に、人間は原初的な不安を刺激されます。
第2のベクトルは、「現実社会における失敗やプレッシャーの象徴」としての恐怖です。簿記検定の試験会場や企業の経理部門など、1円のズレも許されない極限状態の記憶が電卓というデバイスそのものと結びつき、条件反射的な拒絶反応を引き起こします。道具そのものの怪異性と、人間関係や評価に直結する生々しいストレスが同居している点こそ、計算機が怖いと感じられる根源です。