ヒトデの裏側における最大のミステリーであり、最も衝撃的な生態が「捕食行動」です。ヒトデはアサリ、ホタテ、カキ、ムラサキイガイなどの二枚貝を好んで捕食しますが、硬く殻を閉じた貝をどのように食べるのでしょうか。
その手順は極めて暴力的かつSF的です。まず、ヒトデは獲物となる貝の上に覆いかぶさり、腕にある数千本の管足吸盤を使って貝殻の上下を強力に引っ張ります。その牽引力は数十ニュートンにも達し、ヒトデは何時間でも一定の張力をかけ続けることができます。やがて貝の閉殻筋(貝柱)が疲労し、わずか0.1ミリメートルの隙間が開いた瞬間、ヒトデの反撃が始まります。
ヒトデは裏面中央の口から、自らの内臓である「噴門胃(ふんもんい)」を体外へベロリと反転・射出します。薄い膜状の胃袋を貝殻の隙間から内部へと滑り込ませ、貝の生きた組織の上で強力な消化酵素を直接分泌します。つまり、口の中に獲物を入れるのではなく、「自分の胃袋を獲物の体内に入れて外側でドロドロに溶かす(体外消化)」という前代未聞の捕食を行うのです。液状に消化された肉を胃袋から吸収し終わると、ヒトデは何事もなかったかのように胃を体内に引っ込め、現場には空っぽの貝殻だけが残されます。