本作の熱量と説得力を決定づけたのは、主演を務めたリー・ペイスの名演である。傷心と絶望のなかで少女に物語を語り聞かせるスタントマン、ロイ役を演じた彼は、撮影現場で驚くべき手法をとった。劇中同様に自身が下半身不随であると幼い共演者カティンカ・アンタルーに信じ込ませるため、撮影中ずっと車椅子で過ごし、ベッドから出なかったのだ。
少女の純真な反応を引き出すためのこの嘘は、演技を超えた本物の感情の交流を生み出した。フレーム内で交わされる二人の会話は、台本にあるセリフなのかアドリブなのか判別がつかないほどのリアリティを帯びている。リー・ペイスが見せた静かな狂気と脆さは、豪奢な映像美の奥底に確かな人間の温もりと痛みを吹き込んでいる。