ハッサクという果実は気まぐれだ。独特の苦みと強い酸味、そしてみずみずしいシャキッとした食感。これを和菓子の主役に据えるのは、本来極めてリスクが高い。柑橘の水分は餅をふやけさせ、酸味はあんの甘みと喧嘩しやすいからだ。
その難題を打ち破ったのが、絶妙な「白あん」の配合と職人の手技である。主張しすぎない白あんがハッサクの持つ苦みを丸く包み込み、酸味を際立たせる。さらに、保存料を極力抑えた生餅のやわらかさが、全体を優しくまとめ上げる。果肉の水分量を毎日見極め、あんの量を微調整する職人の勘。機械化を拒み続ける愚直さこそが、一口食べた瞬間の「驚き」を保証している。