「なぜ髪の毛に芋けんぴが?」という誰もが抱く素朴な疑問に対する答えは、ひとつの少女漫画作品の中に存在する。作者は、繊細なタッチとドラマチックなストーリー展開で多くの読者を魅了してきた人気漫画家の杉山美和子氏だ。小学館が発行する名門少女漫画誌『Sho-Comi』の増刊号に掲載された短編作品『FD(ファーストデート)』こそが、すべての発端である。
作中、ヒロインの髪の毛に引っかかった高知県名物の伝統菓子「芋けんぴ」を、イケメン男子生徒が「芋けんぴついてるよ」と言いながら摘み取り、あろうことかそれをそのまま自分の口に含んで微笑む。この圧倒的な距離感の詰め方と唐突すぎるシチュエーションが、当時の読者に強烈な衝撃を与えた。甘酸っぱいラブコメディの文脈において、通常であれば花びらやホコリが担うポジションに固い油揚げ菓子が投入された圧倒的なギャップこそが、伝説の始まりだったのだ。