現在、拓殖大学海外事情研究所の教授として教鞭を執る富坂は、アカデミズムの世界でも独自の存在感を放つ。彼が講義や論文で展開する現代中国論は、象牙の塔に閉じこもった抽象的な政治理論とは根本から異なる。
軍事パレードに並ぶ最新兵器や威勢のいい報道資料だけを見て地政学・安全保障を語る専門家に対し、富坂は常に「軍内部の兵站と人事の歪み」「地方財政破綻がもたらす治安維持コストの増大」といった内包するアキレス腱を指摘する。軍を動かすのは思想ではなく、金と補給路、そして将兵の忠誠心だ。地方政府の金庫が底をつき、警察や治安部隊への給与支払いが滞り始めたとき、巨大な治安維持装置は自壊の危機に直面する。
台湾海峡緊迫のシナリオを検証する際も、空想的な開戦論に流されることはない。中国軍の実戦能力、補給能力の限界、そして党内権力バランスの推移を冷静に天秤にかけ、極めて冷徹なリアリズムに基づいたリスク予測を提示し続けている。