漫画という表現媒体の境界線を押し広げ続けてきた古屋兎丸の創作活動は、円熟味を増すとともに新たな領域へと展開しています。戦後昭和のサーカス団を舞台に人間の肉体美と哀愁を描ききった『ルナティックサーカス』の完結以降も、個展やコラボレーション企画を通じて精力的な発表を続けており、アートシーンでの存在感は揺るぎません。
近年では、国内外のギャラリーで開催される古屋兎丸の原画展に数多くのコレクターや若年層のファンが詰めかけています。デジタル作画が主流となった現代において、彼が紙の上に残すインクの筆致、トーンの削り込み、油彩画の手法を取り入れたカラー原画は、生で鑑賞すべき「美術品」としての価値を年々高めています。報道関係者や美術関係者の間でも、漫画家という枠に収まらない現代美術作家としての再評価が急速に進んでいます。
また、過去の名作群がデジタル配信や新装版を通じて国内外のZ世代へと届き、新たな読者層を獲得している点も見逃せません。思春期の脆さや残酷さを描いた普遍的なモチーフは、情報過多なSNS社会を生きる若い読者の心にも鋭く突き刺さっています。