本作の屋台骨を支えたのは、間違いなく渡辺謙の圧倒的な存在感だった。第一部で演じた藤原経清は、国府の官人でありながら蝦夷の誇りに共鳴し、壮絶な最期を遂げる男。白装束で刑場に引き出され、錆びた刀で首を鋸引きにされる凄惨な処刑シーンは、大河ドラマ史上に残る名場面として語り草になっている。渡辺謙が放つ剥き出しの怨嗟と気高さが、画面越しに観る者の喉元を締め上げた。
さらに圧巻だったのは、第三部で経清の子孫である四代・藤原泰衡を再び渡辺自身が演じたことだ。源頼朝の圧迫と一族の宿命に苦悩し、英雄・源義経を討伐せざるを得なかった悲運の当主。猛々しく散った祖先・経清とは対照的に、時代の濁流に押し流されながら崩壊していく平泉を見届ける泰衡の哀愁を、渡辺は研ぎ澄まされた陰影で演じ分けた。同一作品で血の始まりと終わりを体現したこの二役キャスティングは、物語に恐ろしいほどの因果と深みを与えている。