インターネットの掲示板やSNSで定期的にバズを生み出すのが、「ウォーリーを探せ 都市伝説の真相」をめぐるダークな言説です。その代表格が「ウォーリーのモデルは、数十人もの子どもを手にかけた実在の脱走犯であり、赤白の服は精神異常犯罪者の拘束服、探し出す行為は指名手配犯を市民が捜索する心理を表している」という言説です。この不気味な噂は、日本国内のみならず英語圏の「クリーピーパスタ(ネット怪談)」としても広く拡散されてきました。
しかし、原作者のマーティン・ハンドフォードが当時の英メディア(BBCやサンデー・タイムズなど)の特集インタビューで語った一次証言を検証すると、この噂には事実のかけらも存在しないことが明白になります。作者は元々、大勢の群衆が集まる細密パノラマ画を得意とする商業イラストレーターでした。アートディレクターから「群衆の中に特定の中心人物を置いて絵本にしてはどうか」と提案された際、作者が考案したのが「少し間の抜けた、どこかピントのずれた放浪の旅人」というキャラクター造形でした。
トレードマークである赤と白のストライプシャツについて、ハンドフォード氏は「群衆の混沌とした色彩の中で、最も視覚的にパッと目立ちやすく、かつ親しみやすいデザインを選んだ結果に過ぎない」と明言しています。残虐な殺人犯という設定は、後年になってネットユーザーが後付けで創作した悪趣味な都市伝説に過ぎません。名作が持つ圧倒的な描き込みと狂気的な密度が、受け手の想像力を刺激しすぎた結果生み出された現代の民話といえます。