ネット上の言説において散見される誤解が、「あたるは最後までラムを選ばず、他の女性に浮気したまま終わった」「結局二人は結婚しなかったのではないか」というものです。しかし、作品全体を俯瞰すると、これらの認識は事実と異なります。
まず、物語の終幕において二人が結婚式を挙げるシーンは描かれません。鬼ごっこが終わった直後、あたるは再び街の女の子たちに声をかけ、怒ったラムが電撃を浴びせながら追いかけるという「永遠の日常」へと帰還します。この描写をもって「未解決エンド」と誤認する声がありますが、これは高橋留美子氏が意図した「コメディの様式美」です。
原作第31巻に収録されたエピソード「扉を開けて」では、因幡(いなば)の持つ「未来の扉」を通じて、あたるの将来の可能性が描かれています。そこでは、あたるがしのぶや竜之介と結ばれる並行世界が存在する一方で、「ラムとあたるが結婚し、二人の間に『あたるそっくりな顔にラムの角とトラ柄パンツを身につけた息子』が生まれている確定的な未来」が明示されています。
あたるの浮気性は彼のキャラクターにおける防衛本能であり、アイデンティティの一部ですが、彼の魂がラム以外の女性に本気で奪われることは決してありませんでした。最終回は「結婚という形骸化したゴール」を描くのではなく、「二人の関係性が絶対的に揺るぎないものになった」という事実を提示して幕を下ろしているのです。