「ウリの声を聴きながら刃を入れる」と語るのは、長年制作を続ける熟練の伝統工芸士だ。ふくべ細工の加工は、既製品の木材を削るのとは根本的に異なる。外見からは測りきれない殻の厚みの偏りや繊維の走り方を指先の感触だけで見極め、ノミや彫刻刀をミリ単位でコントロールしていく。
一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会が主催する展示会でも、その独創的な技法は高い評価を受けてきた。表面に浮き彫りを施す「浮彫技法」、光の透過度を計算し尽くした「透かし彫り」、そして幾層もの漆を塗り重ねて研ぎ出す「研出蒔絵」など、要求される技術水準は極めて高い。自然が気まぐれに作り出した凹凸をあえて削り落とさず、意匠のハイライトへと転換させる職人の手腕にこそ、真の美が宿る。