博多の夏は、山笠に始まり山笠に終わる。男たちが重さ1トンを超える舁き山を肩に担ぎ、博多の街を疾走する姿は圧巻の一言に尽きるが、その根底にあるのは疫病退散への切実な祈りだ。
起源は鎌倉時代の仁治2年(1241年)。博多の街に疫病が猛威を振るった際、承天寺の開山である聖一国師が施餓鬼棚に乗って町中に聖水を撒き、病魔を退散させた故事に由来する。この尊い祈りの系譜が、現在の博多祇園山笠へと受け継がれてきた。今日ではユネスコ無形文化遺産にも登録され、世界中から熱い視線が注がれている。
祭りの運営を統括する博多祇園山笠振興会は、伝統の厳格な維持と安全管理の両立に全力を注ぐ。七つの「流(ながれ)」と呼ばれる地域組織が競い合いながらも、街全体が一つの共同体として機能する仕組み。男たちの額を伝う汗と「オッショイ」の掛け声には、780年以上の歳月をかけて培われた共同体の絆が宿っている。