「燈花(とうか)」という言葉は、ろうそくの芯の先にできる花の形をした燃えかすの塊を指す。仏教においてこの現象は吉祥の兆し、すなわち幸運の前兆とされてきた。奈良と灯火の関わりは深く、その源流は8世紀、聖武天皇の時代にまで遡る。
疫病や天災に苦しむ民を救うため大仏(東大寺盧舎那仏像)を建立し、国分寺を設けて平和を祈願した聖武天皇。その鎮魂と安寧の祈りは、東大寺の「万灯供養会」や春日大社の「万燈籠」といった伝統行事として今日まで途切れることなく受け継がれてきた。
なら燈花会は、そうした千年以上の歴史を持つ宗教的な祈りの文化を、現代の市民文化として再解釈した試みといえる。無数の火を灯す行為そのものが、いにしえの祈りの記憶を現代の都市空間に呼び戻す儀式なのだ。