この映画の本質は、税金をめぐる攻防戦であると同時に、男と女、追う者と追われる者の濃密な人間ドラマだ。
宮本信子が演じる板倉亮子は、決して無敵のスーパーヒーローとして描かれない。シングルマザーとして子供を育てながら、現場では男顔負けの度胸と粘り強さで悪徳経営者を追い詰める。その対極に立つのが、山崎努演じるラブホテルチェーン経営者・権藤だ。欲深いがどこか憎めない、人間の業(ごう)を一身に背負った怪物を見事に演じ切っている。
特に圧巻なのは、ラスト近くで権藤が亮子に「コップに溜まった水」の例え話で金を残す秘訣を語るシーンだ。溢れて零れ落ちた水しか使わない。だから金が残る。このセリフの説得力と、2人の間に漂う奇妙な信頼関係とも友情ともつかない緊張感。役者の呼吸ひとつで観客を引き込む圧巻の演技合戦は、現代の映画が失いつつある演劇的ダイナミズムの極致と言える。