熊野寮の正門前で繰り広げられる京大熊野寮と警察の衝突は、外から見れば無秩序な暴動のようにも映りますが、実際には双方が極めて高度な法的根拠と手続きを盾にした「極限の押し問答」です。
捜索に訪れた警察に対し、熊野寮自治会の学生たちは門扉を閉ざし、拡声器で捜査員たちに詰め寄ります。学生側が掲げるのは憲法35条が保障する「令状主義と住居の不可侵」です。学生自治会側は決して令状執行そのものを全否定しているわけではなく、以下の手続きを警察に要求します。
・令状原本の確認と、捜索場所・対象物品の厳格な読み上げ
・関係のない一般居室や共用部への無許可立ち入りの阻止
・押収品目録の厳格な照合と立会人の同席
一方の警察側は、証拠隠滅を防ぐために迅速に寮内へ突入したい思惑があります。双方が金属製バリケードやジュラルミンの盾、スクラムを介して押し合う中で、機動隊が大型カッターでチェーンを切断し、強行突入を図る場面がニュース映像として切り取られます。学生側はヘルメット姿で抗議声明を読み上げ、カメラで警察側の違法捜査がないかを逐一記録する――この一連のせめぎ合いが、長年にわたって定式化された「儀式」のような緊張感を生み出しています。