スタジアムの熱気の中、あるいは緊迫した盤面の前で、一流の勝負師たちはなぜ特定の行動を繰り返すのか。その問いに対する答えは、精神のブレを最小限に抑える「フレーム作り」にある。人間は大きなプレッシャーに晒されると、脳の感情を司る部位が過剰に反応し、普段通りの判断力を失ってしまう。
そこで効果を発揮するのが、あらかじめ決められた一連の動作だ。靴ひもを右足から結ぶ、決まった時間にロッカールームに入る、特定の音楽を聴く。これらの再現可能な行動を実行することによって、脳に「いつも通りの状態である」という強いシグナルを送り込む。結果として脈拍が安定し、集中力が研ぎ澄まされる。偶然を必然に変えるための条件付け、それが勝負師たちの仕掛けた罠であり秘策なのだ。