美男美女への華麗なる転身が相次ぐ中、唯一の阿鼻叫喚を生み出したのが副長・土方十四郎でした。女性化した彼の姿は、愛くるしい美少女どころか、体重100キロを遥かに超える巨大な肉体と裂けたような口元を持つ怪異「土方X子(ひじかた えっくすこ)」だったのです。
なぜ土方だけがこのような姿になってしまったのか。その理由は、銀魂らしい極めてロジカルかつ不条理な生理学的設定にあります。作中で明かされた真実は「極端なマヨネーズ過剰摂取によるカロリー過多が、女体化に伴う体質変化によって一気に表面化したため」でした。男の身体であった頃は日々の激しい剣術修行と新陳代謝によって奇跡的に体型を維持していたものの、女性の身体に切り替わった瞬間に皮下脂肪として爆発的に定着してしまったという設定です。
さらに異様なのは、声優の変更すら認められず、元の声優である中井和哉氏の低音ボイスを機械的にヘリウムガス加工したような奇妙な音声で押し通された点です。この容赦ない落差こそが「凹凸篇」のコメディ濃度を跳ね上げる決定打となりました。
一方、事件の黒幕である「凹凸教」の真相にも鋭い風刺が込められています。彼らは「男女の性別格差をなくし、完全なる平等のユートピアを築く」という高潔な理念を掲げていましたが、その実態は「他人の肉体と尊厳を暴力的に書き換えることで自己の教義を押し付ける独善的なカルト」に過ぎませんでした。美辞麗句で飾られた平等の裏にあるグロテスクな支配欲を暴き出すプロットは、ギャグの皮を被りながらも空知英秋氏特有の鋭利な社会批評性が光る名展開です。