ニュース報道の現場において、アナウンサーはどちらの読み方を採用しているのでしょうか。依存 NHK放送用語のガイドライン(NHK放送文化研究所編『NHK日本語発音アクセント新辞典』等)を確認すると、時代の変遷に応じた明確な方針転換が記録されています。
かつてNHKでは、伝統的な「いそん」を本則(優先的に用いる形)とし、「いぞん」を許容として扱っていた時期がありました。しかし、国民への浸透度を測る調査において「いぞん」派が圧倒的多数を占めるようになった結果、現在では「いぞん」を第1の読み(本則)とし、「いそん」と言ってもよいという扱いにシフトしています。
文化庁が実施した「国語に関する世論調査」の公式統計を見ても、その潮流は一目瞭然です。平成11年度(1999年)調査の時点で「いぞん」と読む人が81.2%、「いそん」と読む人が14.2%でした。さらに平成26年度(2014年)調査では「いぞん」が87.2%まで増加し、「いそん」は8.8%へと減少しました。現在のメディア環境では、9割近い国民が「いぞん」を使用している実態に合わせて運用されています。
依存 辞書の定義と意味における変化も顕著です。『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『広辞苑』『大辞林』などの主要国語辞典では、かつて「いそん」を見出し語の主項目(語釈を載せる場所)とし、「いぞん」を誘導見出し(「⇒いそんを見よ」とする形式)にしていました。しかし版を重ねた現在では、多くの辞書で「いぞん」に見出しと詳細な意味・語釈を掲載し、「いそん」の欄には「⇒いぞん」と案内する逆転現象が完了しています。