森口博子の歌手人生を象徴する2大巨頭といえば、1985年の『機動戦士Ζガンダム』後期オープニングテーマ「森口博子 水の星へ愛をこめて」と、1991年の映画『機動戦士ガンダムF91』主題歌「森口博子 ETERNAL WIND CD」に他なりません。
1985年、福岡から単身上京した少女は、ニール・セダカ作曲による難度の高いバラード「水の星へ愛をこめて」でデビューを飾りました。透明感あふれる歌声はアニメファンに衝撃を与えたものの、当時のアイドル市場は過渡期にあり、レコードセールスは思うように伸びず、事務所からは「次の仕事がなければ実家へ帰す」と宣告される窮地に立たされます。そこで彼女が活路を見出したのが、当時まだ女性アイドルの立ち入る領域ではなかった「バラエティ番組での体当たりリアクション」でした。
山瀬まみや井森美幸らとともに「元祖バラドル」の称号を得て、ゴールデン番組の司会やコントで国民的人気を博しながらも、本人は自著や当時のインタビューで「歌番組に出られない悔しさで、毎晩自宅で泣きながら発声練習をしていた」と告白しています。その屈辱と努力が報われたのが、1991年の「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」でした。
包容力に満ちた旋律と平和への祈りを込めた歌詞は有線放送やラジオから火がつき、オリコンシングルチャートで最高9位を記録。同年の『NHK紅白歌合戦』初出場へと結びつき、以降6年連続出場を果たす原動力となりました。バラエティで見せる剽軽なキャラクターと、ステージで見せる神聖なまでの歌唱力。この劇的なコントラストこそが、彼女の歌声を「一過性の流行歌」から「時代を超えるクラシック」へと昇華させた本質です。