モスバーガーが相次ぐ値上げに踏み切った背景には、一過性の要因にとどまらない深刻な構造的理由が存在します。運営会社である株式会社モスフードサービスの公式IR資料や業界統計を精査すると、主に4つの要因が浮き彫りになります。
第一に、世界的な原材料価格の高騰と為替変動です。パティの原料となる牛肉・豚肉をはじめ、バンズに使用する小麦、フレンチフライポテトの揚げ油(キャノーラ油やパーム油)、さらには包装紙やテイクアウト用包材に至るまで、あらゆるコストが跳ね上がりました。
第二に、モス最大の強みである「国産生野菜」の調達防衛です。モスバーガーは全国約2,600軒の協力農家と連携し、農薬や化学肥料に極力頼らない「モスの生野菜」を使用しています。異常気象や肥料代・ビニールハウスの重油代が高騰する中、生産者を買い叩くことなく適正な取引価格を維持し、国内農業を守りながら安全な野菜を安定調達するためには、店頭価格への適正な転嫁が不可欠でした。
第三に、独自の調理システムに起因する「人件費比率の高さ」です。マクドナルドのような徹底したオペレーションの標準化・スピード重視の作り置き(ウォーマー保存)とは異なり、モスバーガーは「注文を受けてから生のパティを焼き、野菜を組み立てる」アフターオーダー方式を採用しています。この仕組みは出来立ての美味しさを生む反面、店舗スタッフの手間と時間を要するため、全国的な最低賃金の引き上げやアルバイト確保の人件費上昇が利益を直接圧迫する構造となっています。
第四に、エネルギー・物流コストの激変です。冷凍ポテトの海上コンテナ運賃の上昇や、国内配送におけるトラックドライバー不足(いわゆる物流の構造的課題)、さらには店舗の電気・ガス料金の引き上げが重なり、従来の価格帯を維持することが困難になったのです。