五郎島金時の歴史は、元禄年間(1708年前後)にまで遡ります。加賀国五郎島村(現在の金沢市五郎島地区)の農民・太郎左衛門が、薩摩国(現在の鹿児島県)へ極秘裏に渡り、厳しい持ち出し制限をくぐり抜けて種芋を持ち帰ったことが栽培の起源とされています。加賀藩前田家の庇護を受けながら、300年以上の歳月をかけて選抜・改良が重ねられ、現在のブランドが確立されました。
金沢市農産物ブランド協会の資料や現地生産者の証言によると、五郎島金時の独特な食感を決定づけているのは、内灘砂丘に連なる水はけ抜群の砂丘地帯です。日本海の強い海風が運ぶミネラルを含んだ砂地は、粘土質の土壌と異なり、余分な水分を素早く地中深くへと逃がします。
水分ストレスを適度に受けたさつまいもは、生き残るために自ら細胞内にデンプン質を凝縮させます。この高密度なデンプン組織こそが、地元金沢で「コボコボ」と呼ばれる独特の口当たりの源泉です。「コボコボ」とは、水分が少なく粉をふいたような、栗にも似た極上のほくほく感を指す金沢の方言。口に入れた瞬間にほどける繊細な粒子感は、この砂丘土壌でしか生み出せません。