おみくじを境内の施設に結びつける行為を「くくる」と呼ぶ習俗は、古来の神道思想である「産霊(むすひ)」という概念に深く結びついています。「むすひ」とは、天地万物を生み出し、育み、整える神聖な霊力を指す言葉です。おみくじをくくる行為は、神託が記された和紙を結ぶ作業を通じて、結びの神とご縁を強固につなぎ留め、自らの運勢を生成発展させるための能動的な祈りの儀礼でした。
一般的に広く信じられているのが「大吉は手元に持ち帰り、凶は境内に結んで厄を落とす」というルールです。しかし、神社本庁関係者や各地の宮司の見解によれば、これには厳格な宗教的戒律が存在するわけではありません。民俗学的な変遷の中で、参拝者の心理的納得感から生まれた習慣にすぎないのが実態です。
実際におみくじが持つ本来の役割と、吉凶ごとの受け止め方は以下のように整理されます。
まず、おみくじ凶結ぶ意味としては、「自身に降りかかりかねない災厄を、神域である境内に留め置いていただき、大難を小難に、小難を無難へと転じる」という厄落としの意図が込められています。「凶」の字が示す厳しさを境内に預け、身軽になって日常へ戻るという心理的リセットの意味合いです。
一方で、おみくじ大吉持ち帰るという選択は、記された幸運な神託を「神様からの励まし」として身近に留め、行動の指針にするために適しています。ただし、「大吉の運勢を境内にしっかりと定着させたい」という願いから、あえて境内にくくって帰る作法も教義上完全に正当です。逆に、凶を引いた場合でも「現在の戒めや教訓として手元に置き、常に身を律する糧にする」として持ち帰る神職も少なくありません。
結論として、おみくじ持ち帰りか結ぶかという判断は、引いた本人がその神託をどう受け止め、日常でどう活かしたいかという主体的意志に委ねられています。