終戦後、歌舞伎が存続の危機に瀕していた時代。若き日の七代目 中村芝翫は、伝統を守るという重圧と正面から向き合った。師であり父でもある名優たちの教えを胸に、血の滲むような稽古を重ねる日々。女方としての洗練された身のこなし、指先ひとつにまで宿る情念は、瞬く間に劇評家やファンを虜にした。
松竹株式会社がプロデュースする本興行において、彼は常に中心的存在であり続けた。時代物から世話物、舞踊に至るまで、幅広い演目を圧倒的な美しさで表現。その長年の精進が結実し、人間国宝に認定された瞬間は、まさに歌舞伎の歴史に新たなページが刻まれた瞬間でもあった。